告知など
- 「勇者彼女がトイレから出てきません。」
- 彼女がうちのアパートに来たかと思ったらトイレに入って出てこなくて、 何をしているかというと、異世界で勇者をしている話。
- 「ダウン症があるとかないとかどうでもいい、誇りがあればいい。」
- そろそろ子育てエッセイなどというものを書いてみようかと思った次第。
- 「小説生成システム開発計画 - プロジェクトNUE」
- 計算機に小説、いや、使い物になる文章を作らせてみようという試みを、 勉強しながらやってます。
2016-01-18 [Mon]
▼ 2016年になりました
あけましておめでとうございます。いや、もう1月も半ばなんですけどね。
忙しいんですよ、それこそ死にそうなレベルで。
いくつかブログに書いておこうかなと思ったネタはあったのですが、書く気力が出なかった。時間もなかった。
今も時間はない。
つらい。
今年の目標は、楽してお金を稼ぐ。いや、楽というか、まず考えるための余裕を作るため、足場となる資金を稼ぐ。
そんな感じであります。
さて、そんな私がこのクソ忙しいなかに筆をとったのは理由がありまして。
以下のような記事が公開されました。
内容をまとめると、テンプレ能力系ラブコメの冒頭プロットを渡して、執筆してもらうというのを、クラウドソーシングしてみたって話です。
http://www.lancers.jp/work/detail/856228
この案件のようですね。
で、この記事の筆者は、こんな感じで一本書いてみようと思っているようです。
価格をみると、3000文字で、6480円。プロの作家の原稿料の相場の1/10ですな。
とはいえ、PBMとかPBW系のゲームのシナリオ?GM?みたいなの、これくらいの原稿料で募集してたりするんだよね。
ライティングの相場というのもまた、デフレっている気がします。
それはそれとして。
このやりかた自体は面白いなと思ったんですよ。
たとえば、文庫一冊を少し細かく10章に分割してみます。すると、1章が1万字くらいになります。
1万字を1万円でクラウドソーシングしたとすると、10万円で一本分の原稿になります。
10章のプロットを一気にばらまいて書いてもらってもいいかもしれないし、一章ずつ「続きを書いてください」として発注してもいいかもしれない。
どっちにしても提出された原稿は全体的に手直しする必要はあるだろうけれど、これで本当に「作品と呼べる代物ができるのか」という実験はしてみてもいいかもしれない。実験費用として10万くらいなら、まあ出してもいいかなというレベルだし。
……という実験をするのは、もはや不可能ではない。やろうと思えば、今日にでも実行できる。
ただ、これには色々と派生する問題というか、問いかけがあるなあと思ったわけですよ。
まず、この価格は不当に安い。原稿料以下。しかし、これで書こうという人がいたっていう事実は事実としてある。
クラウドソーシングが成立する条件ってのは色々あるとは思うけれど、ひとつには需要と供給の経済格差を利用するってのがあります。発注する側からすると10ドルは安いけれど、受注する側からすると10ドルは高価っていう場合。ライティングの場合、それなりの品質での作文能力や、そもそも言語の壁ってのがあるのですが、日本市場の中でも安い価格での需給が成立してしまうという状況。
だいたい、ライティングってのはクラウドソーシングされてよいものなのかという問題があります。
クラウドソーシングは相手にするのがクラウドであるという前提なんだけど、クラウドの連中にライティングができるのか?でも現実的にできる。これはクラウドソーシングの別の側面、プロフェッショナルが自分の都合に合わせて小さな仕事を受けるケースに当てはまると思います。そういう場合は、プロの仕事の相場よりは安いことはあるけれど、あまりにも低すぎるということは少ない。あまりに安い場合は、たいてい駆け出しとか仕事の質が低いとかです。
上記ブログの結果である「プロ相場の1/10の値段で、そこそこの原稿が上がってきた」というのは、見方を変えると、
・テンプレ能力系ラブコメの原稿は、もはやプロフェッショナルの仕事ではなく、クラウド集合体に書かせてよい
・クラウド集合体は相場の1/10の値段でも仕事を受ける層から構成されている
・言語の壁問題を考えると、テンプレラノベを書くクラウド集合体は国内に存在しており、文章で小銭が欲しい
・クラウド集合体の文章力が、テンプレラノベを書けるくらいには上昇しているとも言える
「小説を書く」という行為が、一般的な作家(含むラノベ作家)が思っている以上に変質している気がするのですよ。
ライトノベルの勢いが増したときに、小説を書いて投稿するっていう行為がかなりコモディティ化したんだけれど、その後のなろうなんかの勢いを見ていると、更にコモディティ化している。あれだけの数「数万字という原稿を書ける人間」が存在しているってのは、これまでの文学の歴史の中でなかったことなんじゃないですかね。
それにともない、小説、あるいは小説の形をした文章を書く能力の特殊性も下がり、平均して価値も下がる。少なくとも有り難味は下がる。
ただ、それがプロの仕事に値するかというと、また少し別の話。
IT業界の話でたとえると、ラズパイってのはどう頑張ってもそれで製品作っちゃいけないレベルの品質なんだけど、でもそれで十分な世界(遊びとかプロトタイピングとか)はある。問題は、「ラズパイが5ドルなんだから、あんたのところの製品は10ドルくらいで作れるよな」とか言い出す人が出てくることで、そういう人は製品の良し悪しが実はよく分からなかったりする。
それと同じことが、今回の「クラウドソーシングでテンプレラノベを書いてもらう」というのと同じことでも言えるのではないかなとは思う。
実験としては面白いけれど、これでプロレベルの製品が作れると勘違いする人の出現が一番こわい、というか。
更に突っ込んで考えると、ラズパイもテンプレラノベも、ベースラインの教育による底上げの欠如という問題があるんだけれど、それはまた別の機会にでも。